
ドライブがてらに
車を1時間くらい走らせて
ド田舎の温泉へでかけた
初めて行く温泉だった
こじんまりとした
小さめの温泉だけど
ちゃんと露天風呂もある
浴室に入ると
お風呂脇に3人並んで
井戸端会議をいている
お婆さんたちを発見
圧倒的な常連感がただよっていた
私と娘は
洗い場へ向かった
髪や体を洗っていると
何やら楽しそうな話し声が
お風呂中に響きわたっていた
天井を見上げると
男風呂とも繋がっているようで
そちらからも声が聞こえる
男風呂も、なかなか賑やかだ
そうしているうちに
歌声が聞こえてきた
明らかに、お風呂脇で見かけた
3ババのうちの1人であろう
人の歌声と2人の手拍子
民謡だ
歌詞がさっぱりわからない
聞いたこともない民謡
「お風呂の路上ライブ初めて」
娘が、あまりにも本気で歌う
お婆さんの民謡に引いている様子
なるほど
路上ライブならぬ
呂上ライブか…
拍手喝采を受け
どうやら歌い終わった様子
そうしているうちに
私と娘も体を洗い終わり
浴槽へと向かう
歌っていたであろう
お婆さんが、まだいた
一人になっていた
もう歌わないだろう
そう思った矢先
60代くらいのおばさんが
そのお婆さんに話しかけ
2曲目を歌い出した…
どうやら「何か歌って」
とリクエストしたらしい
腹の底から声を出し
お風呂場に、また歌声が響き渡る
意外と長い
いつ終わるか
そればかり考える私
やっと歌い終わり
少し離れた所にいた
おばさんまでも拍手を送っていた
自分が嫁に来たころの曲だ
という会話が聞こえてきた
おそらく半世紀以上も前の話
民謡の歌詞はわからなかったけど
若い頃嫁にきて、不便であろう田舎暮らしを
忙しく過ごし、年を経てのんびりお湯を楽しみに
ここへ通っているのだろう
そして、このお風呂で仲良くなった人と話をし
呂上ライブをするのが、今は生きがいなんだろうな・・・
お婆さんのこれまでの人生を
私は、勝手にねぎらった
腰は曲がっているけど
しゃんしゃんとした足取りで
満足げにお風呂場を後にした後ろ姿を見て
『こりゃ、100歳まで元気だな』
そう確信した
お風呂からあがり
夫と合流
夫「女湯、賑やかでしたね」
私「民謡な。路上ライブならぬ
お風呂の『呂上ライブ』でしたよ」
娘がニコニコしていた